story

Chapter6



「よろしくね、モサ、MT」

そう言って彼女は笑った。
白藍の瞳が濁ることなく細められる。やっぱり、きれいだ。


Chapter6


お邪魔します。先程の威勢のよさはどこかへ行ってしまったようだ。
あの後、僕に話があると言った彼女を家へ招待した。なぜかMTも一緒に。
少し小さく見える彼女は、おそるおそる家へ足を踏み入れる。
その様子を見ると、やはり彼女も普通の女の子なのだと、するりと頬が緩む。
人の家に上がるというのはいつになっても慣れないもので。そこは空気も、匂いも違うちっとも知らない場所で。
急に自分の居場所を失ってしまったような錯覚に陥る。だから緊張するのも無理はない。
まあそんな事もMTは例外のようで、彼はいつものようにずかずかと家に入り込む。今や指定席となった古ぼけたソファの真ん中に腰を下ろす。
しかし今日ばかりはその席を独占させるわけには行かない。

「MT、ちょっとよって。」

「へいへい」

「じゃあここに座ってて。汚くて申し訳ないんだけど。」

彼女に向き直り、苦笑い気味に話す。

「ううん、あり、がとう。」

固くした姿勢を崩すことなく、首を振る。そしてそろそろとソファに近付き、距離を開けつつMTの横に座る。
それがおかしくてまたくすりと笑って、お茶でも入れようとポットに近付いた。

「もさ!」

突然ぴょこ、とモサモサが僕のマントから顔を出す。そういえば入れっぱなしだった。
モサモサを出してあげようとすると、自らそこから脱出して華麗に僕の肩を踏み台にジャンプ。
行く先にはルピのコート。がしりとしがみついたかと思うと、あろうことか彼女のコートへ潜っていった。
当の本人はびくりと肩を震わせるも、その行動を呆然と見ている。
MTまで行く末をじっと見つめている。

「っこら、モサモサ!」

はっと我に返り、未だにコートの中でもごもごと動いている緑を、彼女に申し訳ないと思いつつも慌てて掴んだ。
ぶに、とやわらかい肉の感触つまみ、引き出す。
その緑にもう一つ。見覚えのある虹色。その頭にはあまりにも幼稚でファンシーなリボンが揺らめいている。

「、え?」

「・・・あ、ルピルピ。」

「それ、アケローンか?」

「うん、そうみたい、だね。」

「同じ匂いがしたのかも。」

ふふ、と彼女は笑った。みんなの顔に笑顔が咲く。
少しの壁が取り除かれて、この冷たい街に太陽の光が差したように体があたたかくなった。

緑と虹が仲良さげに小さく鳴いた。


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