story

Chapter3


Chapter3

「じゃあ、行くぞ。」

うん、と頷いてMTの後ろに乗る。同時に、モサモサを服の間に入れておく。こうしないとこいつは飛ばされちゃうからね。
その途端、劈くような悲鳴を上げて、バイクが走り出す。・・・この音はいつ聞いても慣れない。少しだけ、肩を窄める。

このバイクは、この国の技術で作った、超速移動用水陸二輪だ。
何年か前のバイクよりは武骨で、速さだけを追求したバイク。
MTのものは、少し改造してあるから、普通のものよりは早い。でもその分、乗り心地が悪いことこの上ない。ケツ痛い。
・・そんなこと言うとMTに降りろ、って怒鳴られそうなので、絶対に言わないけど。


海の香りが濃くなり始めた頃、青く反射する海が見えてきた。きらきらと光り、この地が環境破壊されている事など忘れそうになる。
そこへ漁船や客船が浮かんでいる中、一際目を引くそれ。

「あ・・・」

「おお、見えてきたぞ!」

「わああ!MT、前、前見て!」

ごうん、と僕らの横をすれすれに走っていく大型のトラック。もう少しハンドルを切るのが遅かったら。今になって冷たい汗がどっと溢れる。
前見て運転してよね。じとり、彼を睨んでみるが、もうすでに彼は海の方を見つめていて、気付かれることはなかった。
僕もつられて、再び海に目を向ける。

目に映るそこにはペリポリパ、それがある。
あれが宮殿の打ち出した「機械空住計画」の産物。現在はこの世界の多くの人々がそこに住んでいる。
形は「魚」そのもの。今ではほとんどの人が「魚」と呼んで信頼を寄せている。
僕がこの地に残る理由はあれだ。なぜか僕はあれに乗ることを拒んでいる。なぜかは分からないけれど。

バイクが港に近付き、全貌が見える。今は空から海に降り、人を吐き出している。
吐き出し終わると、人々が「魚」に群がり、賑わいを見せる。「魚」に乗り込む人、あるいはそれを見送る人。

「MT、乗り込み始めてるよ。急がなきゃ」

「わかってるよ」

アクセルを手前に巻き、スピードを上げる。マフラーに開けた小さな穴のせいで、さらにうるさくバイクが鳴く。
風圧が増し、息苦しくなる。大きく口を開けて息を吐き出そうとするが、対照的に微かな咳が漏れただけだった。


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