story

Chapter2

Chapter2

「モサー!」

今日は約束があった、と思った途端だった。僕の名前を呼びながら、どたどたと階段を駆け上がってくる音が聞こえる。
この声はMTだなぁ。エムティー、彼は小さい頃からの僕の友達で、何かと僕の世話を焼いてくれる。
彼には探している人がいるらしい。どうもそれは家族のようだが、詳しくは知らない。
その人は、もうとっくに空にいるかもしれないのに、彼は地上で誰かを探し続けている。
誰を探しているとか、僕にできることはとか。そういうことは僕のエゴでしかない、だから絶対に口にはしない。
彼も、僕がこの地に留まっている理由を聞かないし、僕も言わない。お互いにどこかで距離を保っているから、この関係があるのだと最近思う。
また回想に耽ってしまった、次第に大きくなる足音に、現実に戻される。・・・この家が軋んでいる気がする。
だだだ、と一番近くまで足音が聞こえ、扉の前でぴたりと止まる。

エムティー、と彼の名前を呼ぼうとしたところ。だん、と扉を蹴破って来た。鍵が掛けてあったはず、なんだけど。

「MT、」

「おい起きろモサ!今日は8時に港に行くって約束だろ!」

朝の挨拶もなしに、開口一番、文句。8時に港・・、ああ、そうだった。
隣街にある、大きな港に行く約束をしていたのだった。ここから隣街までは30分ほど。今は7時52分。
あれ、間に合わないよこれ。

「MT、悪いんだけど、この時間じゃ間に合わないよ。」

「あー・・・バイクで来てっから大丈夫だ。」

いいから早く着替えろ、呆れたように言う。バイクで来ているのなら、港まで5分もかからない。
今は7時54分。これは本格的にやばい。

「ごめん。すぐ着替えるから。」

苦笑いで謝ってから、急いで、ベッドにかけてあったフードつきのマントを被る。MTはもう既に、蹴破ったドアの側に立って、
僕を急かしている。あれは8時出航だったか。

「おいてくぞ、モサ」

軽く返事をして、ドアに駆け出す。もちろんモサモサを連れて行くのを忘れずに。
遠くで何かが鳴く声が聞こえた。



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